2017年 7月 4日 施行
2018年 8月 1日 改定 (第2版)
2019年 3月 1日 改定 (第3版)
2021年 4月 1日 改定 (第4版)
2023年 5月30日 改定 (第5版)
2024年 6月18日 改定 (第6版)
(改定個所は下線部)
IMPELLA 適正使用指針
I. 適正使用指針
(1) 適応基準(対象:疾患・病態)
承認書の「使用目的又は効果」欄に記載の通り、補助循環用ポンプカテーテル(IMPELLA、以下本品)は、心原性ショック等の薬物療法抵抗性の急性心不全に対して使用される。ここでいう心原性ショック例とは、あらゆる内科的治療抵抗性の急性左心不全を主体とする循環不全が遷延する症例であって、従来のIABPまたはPCPSによる補助循環のみでは循環補助が不十分と想定される病態にあるもの。心原性ショック例の定義は細則に定める 。
ただし適応には十分注意し、自己心拍再開を認めていない症例や、低酸素性脳症が強く疑われ、予後が極めて不良と想定される症例などはIMPELLA使用の除外も考慮に入れること。
補助循環用ポンプカテーテル(IMPELLA)は左室内に留置されて左室の血液を汲み出し大動脈から全身に拍出する補助循環装置(VAD)と同等の機能を持つ流量補助装置であり、心負荷軽減と心筋循環改善による心機能改善効果が期待される。カテーテルVADであるため、ショック時の対応が迅速で、かつ低侵襲に装着可能である。一時的な補助装置であるため、離脱不可能な場合は、中長期VADへの移行も考慮すること。PCI中のみの補助には使用しないこと。
(2) 施設要件
- 心臓血管手術の症例が年間100例以上ある施設であること
- 植込型補助人工心臓実施施設であるか、地域性を踏まえた植込型補助人工心臓実施施設かつIMPELLA実施施設と密接に連携が取れていること
自施設が体外設置型補助人工心臓実施施設である場合も、植込型補助人工心臓への植え替えが必要な場合に備えて、植込型補助人工心臓実施施設かつIMPELLA実施施設と地域性を踏まえた連携関係を構築しておくこと - 体外循環技術認定士等の補助循環に精通した技士がいること
- 補助循環に習熟したスタッフを有するCCUないしICUがあること
- 本機器使用前に、本機器の取り扱いについて医師及びスタッフは、製造販売業者が提供する講習会を受講することで手技に習熟すること
- 関連学会協議会が行う本機器の使用成績評価に参加すること
- 施設認定およびスタッフ等の規定については、関連協議会が設置する委員会で細則を決定する 本施設要件に関しては、認可後全例調査を行い、関連協議会が設置する委員会で安全性および有効性をふくめた検討を行う。また、使用経験の増加に伴い検証が可能となることから協議会で細則を見直すこととする。
- 本指針は2017年7月4日より有効とする。
II. 細則事項
(1) 心原性ショック例の定義
定義は日本循環器学会心原性ショックレジストリに準ずる 。新たな定義が定められた場合にはそれに従う。
定義: 院内外発症の心疾患による救急初療時ショック状態(初療前もしくは初療中:以下の大項目のうち一つと小項目を一つ以上満たしたもの)を呈した患者
院外心停止患者については自己心拍再開後もショック状態が遷延しているものを含める。
大項目:
- 収縮期血圧100mmHg未満かつ心拍数60未満もしくは100/分以上
- 通常収縮期血圧より30mmHg以上の低下
小項目:
冷汗、皮膚蒼白、チアノーゼ、爪床反応2秒以上の遅延、意識障害(JCS-2以上)等、初療医が末梢循環不全と判断した場合
尚、近年、心原性ショックの定義については、SCAI(Society for Cardiovascular Angiography & Interventions)がACCやESC、STSなどの複数学会と合同で提唱しているSCAIショックステージ分類(ステージA~E)が一般的に用いられるようになっている。心原性ショックステージの病態は原著を参照すること。本製品の使用にあたっては添付文書を遵守すること。
SCAI SHOCK Stage Classification Expert Consensus Update: A Review and Incorporation of Validation Studies. Naidu et al. J Am Coll Cardiol. 2022 Mar 8;79(9):933-946.
(2) 実施施設認定基準
- 心原性ショックの治療実績が十分にある救急・集中治療体制のある施設であること
- 循環器専門医、および心臓血管外科専門医(小児専門施設の場合は小児循環器専門医)、集中治療専門医、心血管インターベンション治療学会認定医あるいは専門医(名誉専門医を含む)、メディカルスタッフにより構成されるハートチームがあり、補助循環治療の実施体制が整っていること
- 体外循環技術認定士または人工心臓管理技術認定士2名を含む3名以上の臨床工学技士の在籍があること
- 心臓血管手術年間症例が100例以上(小児専門施設の場合は18歳未満の心臓手術50例を含む)
- 最近3年間のIABP総数30例以上、およびPCPS/ECMO(VV-ECMOを除く)総数20例以上
- 最近3年間のPCI施行総数300例以上
集中治療専門医の在籍に関しては、2024年以降は新規申請、更新申請ともに必須条件とする。ただし、インペラ委員会は、地域性を考慮して特例について検討することができる。
連携施設からの非常勤医師としての集中治療専門医の派遣と実診療を伴うコンサルテーション等
小児専門施設における使用に関しては、「小児用補助人工心臓実施基準および適正使用基準」に準じて、「体重の小さい小児例」に対して用いるためのものである。これらの施設の認定においては、IABPおよびPCIの症例数は不要である。ECMO総数に関しては、「11歳未満における機械的循環補助(補助人工心臓、ECMOの装着)を最近5年間で3例以上」とする。
(3) 実施施設に求める体制、使用要件並びに推奨
- 関連各部門の人員への導入トレーニングを受けること
- 補助循環用ポンプカテーテル全症例登録(レジストリ)を行う施設にのみデバイスが供給される。
- 本品を使用する施設の導入初期の3例においては、手技の習熟とより安全な使用を目的として数時間以内に心原性ショックに陥る可能性が推測される症例(但しPCI中の補助のみに使用する場合は除く)に使用することを推奨する。
- 補助循環用ポンプカテーテル実施施設認定有効期間は、初回症例実施日から3年後の年度の3月末日までとし、その後3年毎の更新とする。
- 新規認定後3年間で制御装置導入が未定の場合には、再度申請を行うこととする。
(4) 補助人工心臓治療関連学会協議会の役割
- レジストリの管理および運営を行う。
- 施設の認定および検証を行う。
- 適正使用のモニタリングと勧告を行う。
- 継続的教育(セミナー等)を行う。
- 上記の役割を補助人工心臓治療関連学会協議会の承認のもとにインペラ部会で行う。
(5) 補助人工心臓治療関連学会協議会インペラ部会による適応基準、施設基準、運用基準の調整
- レジストリに基づいた検証を行い、選択基準、除外基準を含む適応基準や施設基準の内容、並びにその運用方法について、適宜見直しを行う。
- 症例登録に著しく遅滞した場合、または入力が行われないような場合には、事態の改善が確認されるまでの間、施設認定を停止するなどの措置を講じることがある。
- 地域性を考慮して、普及に合わせて認定を推進する。
- 施設要件や運用の細則については、当面の施設トレーニングやサポートの実施体制の制約、および導入後の臨床成績の評価を踏まえながら、少なくとも3年毎に点検・見直しを行う。
- 認定施設の更新については別途定める
- 本細則は2017年7月4日より有効とする。